古畳充填工法とは?



 日本伝統家屋において、畳は居間や寝室の床材として使われて来た。大きさは様々だが、一般的には1820mm x 910mm x 60mmである。回収された古畳は泥コン屋が細かくし、土に混ぜ、発酵させ、壁や屋根の塗り土を作り、商品とする。しかし、近年、荒壁土や屋根土の重要が減って、泥こん屋が全ての捨てられた畳を処分できなくなって、処分できない畳が燃えるゴミになる。
塗り材として土に混ぜられる畳(京都)
 また、古畳を果樹などのマルチとして使用、裏庭の片隅に置き土に帰すなどする。どちらにせよ、畳縁や紐が厄介である。
 庭で土に帰る畳
 畳屋さんが最も困っているが発砲スチロール畳の処分である。古畳の破棄処理代は畳一枚につき約1000円。ゴミならずに再生・アップサイクルのため、筆者が古畳充填工法を研究している。
 断熱材として、古畳の利用方法が二つある。一つは、ガラスファイバー断熱材と同じように古畳を柱の間に設置することである。二つ目は、石膏ボードと同じように畳を面材として木造下地材に固定することである。

充填断熱材として古畳の利用方法
 畳を柱の間にはめこみ、幅と厚みに合わせて、間柱(細い支柱)を立てる
木摺り用の板をつくる。この場合は竹を割って節を取る

釘やビスで割り竹を留めて固定。この上に塗り材などを塗る
 土壁の下地
 日本では断熱材としての古畳の利用が少しずつ広かっている。古畳充填工法を促進する団体が存在しないので、誰が始めに考えたのかは判らないが、幾つか事例を紹介したいと思う。
 2008年にパーマカルチャーリスト、本間フィル・キャシュマン氏による神奈川県葉山市に或る自宅の改修。古畳を断熱材に使用し、土で仕上げた壁。
古畳で改修した壁
 2014年、香川県綾川町の筆者が左官工事を率いた古畳を使用した改修現場。飯田ベンジャミン善郎氏デザインと大工担当。
古畳充填工法による改修工事前と後
 ここでは、古畳を2つの異なる方法で使用した。一つは、漆喰を塗る為の下地材(石工ボードの代用)として古畳を使用した。漆喰は粘着性が高いので選んだ。この場合、先に柱と同じすらに木工下地を造作して、その後、ウォッシャーとビスで畳を柱と木工下地に固定する。目地処理のため、接合部分は最初漆喰で薄く塗られ、普通に木の幹に巻く麻布のテープを伏せ込んで、更にその上を漆喰で塗る。数ヵ月後に小さなひびが一つ見られた。繋ぎ目を強化する為に石膏を使用すると良いと思う。
 
目地処理
二つ目の方法は、柱の間に填まる様に畳を切り、填められた畳を覆うように柱に水平に木摺りを打ち、その上に下塗り土を塗った。
地元の土と藁の繊維を混ぜる(左)出来上がった土の下塗(右)
 
木摺りに塗った下塗り(左)コンポストトイレ(右)
漆喰仕上げ
 201年、千葉県鴨川市の筆者が左官工事を率いた古畳を使用した改修現場。飯田ベンジャミン善郎氏大工担当。
熱帯・亜熱帯植物用温室
充填断熱材としてスタイロ畳を利用
土壁の下地として、木擦りを張る
土壁
 漆喰かた押さえ仕上げ
 
 完成
断熱材としての古畳の使用は今後日本において大いに可能性がある。

No comments: